情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あ」


左近様も彼に気付いたらしく、苦笑いしている。


「す、すいませんッス」


小助くんは恥ずかしげに足早で行ってしまった。


「あいつもあんたに劣らず純粋で恥ずかしがり屋ですね」


なぜかニヤニヤする左近様。


「残念だ。俺達の仲、もっと見せつけても良かったんですがね」


「もう!何言ってるんです。左近様は怪我人なんですから寝てて下さい」


「それは出来ませんね。朝まで離してあげませんって言ったでしょう?」


「そりゃ言ってましたけど」


「はからずもここ2日ほど1人寝の寂しさを味わわなくてはならなかったんですよ」


「うっ、私が飛び出して行っちゃったからですよね」


思わず苦笑する。


「ええ。だから実感させて下さい。今、俺のそばに友衣さんがいるってこと」


ほら、まただ。


「もー、やっぱりずるいなあ。左近様は」


私がそういう砂糖よりも甘い言葉や笑顔に弱いって知っていながら、ストレートに愛情を表現するんだから。


愛しさが溢れて、溢れて、止まらない。


そっと自分のよりも一回り大きな手に手を重ね、指を絡める。


私だって繋がっていたい。


大好きな人の隣にいるって実感したい。


「なかなか可愛いことするじゃないですか」


左近様は嬉しそうに笑った。


ああ、生きている。


包まれる優しい温かさにそう実感し、そのままゆっくりとまどろんでいった。
< 276 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop