情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド三成-
「もう、終わりだな」
オレは捕まることを覚悟した。
もう体はとっくに限界を越え、感覚がなくなっている。
匿ってくれた農民がいたが、もしそのことを家康の捜索隊に知られたら彼もただじゃ済まされない。
だから逃げた。
匿ったという事実を誰にも口外せぬよう固く口止めをし、証拠もすべて消させて。
そして、山奥にこもり、たまたま通りかかった者に通報させた。
「三成殿…」
やって来た捜索隊の頭は田中吉政だった。
昔、豊臣秀次様の怒りを買って牢人となっていたところを不憫に思い、オレが許してやるように頼んだことのあった男だ。
その恩を感じているのか、吉政はいくらか沈んだ表情だ。
そんな彼にオレは言った。
「オレは義のための戦をしかけた。そのことに後悔はしていない。だが、ひとつだけ心残りなことがある」
心残りなことがひとつだけあるなんて嘘だ。
オレの大切な家族、友、そして家臣…。
彼らともっと共に人生という道を歩きたかった。
そのことだって心残りだ。
「三成殿、心残りなこととは?」
「恩義ある故人のご遺志を踏みにじった不義なる者が権力を持って良いものか。生き延びて良いものか」
「…」
吉政は複雑な表情をしたまま、否定も肯定もしなかった。
「もう、終わりだな」
オレは捕まることを覚悟した。
もう体はとっくに限界を越え、感覚がなくなっている。
匿ってくれた農民がいたが、もしそのことを家康の捜索隊に知られたら彼もただじゃ済まされない。
だから逃げた。
匿ったという事実を誰にも口外せぬよう固く口止めをし、証拠もすべて消させて。
そして、山奥にこもり、たまたま通りかかった者に通報させた。
「三成殿…」
やって来た捜索隊の頭は田中吉政だった。
昔、豊臣秀次様の怒りを買って牢人となっていたところを不憫に思い、オレが許してやるように頼んだことのあった男だ。
その恩を感じているのか、吉政はいくらか沈んだ表情だ。
そんな彼にオレは言った。
「オレは義のための戦をしかけた。そのことに後悔はしていない。だが、ひとつだけ心残りなことがある」
心残りなことがひとつだけあるなんて嘘だ。
オレの大切な家族、友、そして家臣…。
彼らともっと共に人生という道を歩きたかった。
そのことだって心残りだ。
「三成殿、心残りなこととは?」
「恩義ある故人のご遺志を踏みにじった不義なる者が権力を持って良いものか。生き延びて良いものか」
「…」
吉政は複雑な表情をしたまま、否定も肯定もしなかった。