情炎の焔~危険な戦国軍師~
戦場で、ただ目の前の敵を討つために躍起になった。


何度撃たれても気絶するまで戦った。


そうして、最愛の彼女は自分の体を傷つけ、命を捧げる覚悟をしたほど大切に思った主は散った。


俺は何をしているのだろうか。


「考えてみれば、主が死んだのに家老が生きてるのもおかしな話だな」


思わず寂しい笑いがこぼれる。


ー「オレはいつも自分が否定されるようなことを言われると、それよりも遥かに厳しい言葉で着実に打ち返してしまう」ー


ふと殿の言葉を思い出す。


ー「おまけに不器用だ。どう言えば人が喜んでくれるのかわからず、不用意に傷つける」ー


そう、いつも1人で強がって「棘のある言葉」という盾を振りかざしているような人だった。


ー「オレはオレの信念を曲げることは出来ない」ー


眉目秀麗で頭は切れるのに、不器用。


そのくせ自尊心の高い潔癖な人だった。


だが、それだからこそ俺は殿を選んだ。


そんな人が望む未来とはどういうものか、共に見たいと思った。


そしていつしか興味は信頼に代わり、命を捨ててもいいとまで思うような絆を感じていたのだ。


結果としてこうなってしまったが石田家に仕えたこと、後悔はしていない。


ー「オレはなんと無力だろう」ー


ふいに友衣さんが言った殿の言葉が蘇る。


「無力なのは俺も同じですよ」


結局、あなたを助けられずに生き延びてしまった。


「殿…」


俺の言葉は誰もいない空間に消えていった。
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