情炎の焔~危険な戦国軍師~
一方、徳川方。


「三成は死んだか」


家康が家臣に話しかける。


「はっ、処刑致しました」


「よろしい。首級(しるし)は三条河原に晒しておけ」


「御意」


「それからあの娘御を捜索し、連れ戻せ。もういいだろう」


「承知しました」


家臣が引き下がるのと入れ違いに、ゆいが現れた。


普段は冷静な彼女だが、この時ばかりは深い悲しみと激しい怒りが混ざった顔をしていた。


「家康様。本当に三成殿を殺させたのですね。そしてなおも晒し首に」


「ゆい…」


家康はいつもとは違う彼女の様子に戸惑う。


「三成殿を捕らえた後に大津城前で、さらには京の町で生き晒しにしてもまだ足りないのですか?もういいじゃないですか」


「わしに逆らった者の末路はこうだと見せしめなければこれからも反逆者が出、乱世などいつまで経っても終わらぬ」


「ふ、そうやって正当化するのですね」


嘲るような言い方と氷のように冷たい目。


見たことのないゆいに内心動揺しながらも、家康はなんとかなだめようとした。
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