情炎の焔~危険な戦国軍師~
「…というわけなのです」


華さんの表情はひどく暗い。


「あんた、やっぱり殿を騙してたんですね?殿がどんなにあんたを愛していたか…!」


いつになく感情的になる左近様を私は慌ててなだめる。


「落ち着いて下さい、左近様」


「っ…」


彼はまだ悔しそうだ。


私はひとつ気になることがあったので聞いてみる。


「華さん、私が見る限りですがあなたは諜報活動をしてなかったんじゃないですか?」


そりゃ多少なりとも忍術を心得ている人みたいだから、私のような素人じゃ見抜けないって言われたらそれまでだけど。


「何よりあなたは三成様を本気で好いていたように見えました」


「なぜそう思うのです?」


華さんは悲しみと驚きの混ざった表情になる。


「だってそうじゃなかったらそんな悲しい顔なんてしないでしょう?それにわかるんです」


私は微笑して華さんを見た。


「私にも愛している人がいますから。恋をすると女の子って変わりますよね」


そう言って左近様の手に手を重ねてみせる。


華さんとは佐和山城の時でさえあまり関わらなかったけど、三成様と会っている時の顔だけは確かに普通の1人の女の子の顔だった。


「友衣さん…」


華さんは深々と頭を下げる。


そして顔を上げ、思いを語り始めた。
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