情炎の焔~危険な戦国軍師~
「確かに最初は間者としての任務を全うしようと思って三成様の元に潜入しました。ですが」


私達は聞き役に徹する。


「三成様を初めて見た瞬間、まるで雷に撃たれたような気がしました。少年のような涼やかな瞳。まるで吸い込まれてしまいそうでした」


話の先を促すように、私は頷く。


「いつしか、いつも冷たいふりしてさりげなく見せてくれる優しさに惹かれていて、家康様の元にいた頃よりも心が明るくなっている私がいたんです」


左近様は腕組みして黙っている。


「あの方も私を愛してくれていたとわかった時、本当に嬉しかった。あの方のそばにずっといたいと思った。だから大垣城まで行って追い返された時も、戦に勝てればまた会えると信じていました。なのに…」


その先の言葉はなかった。


三成様。


あなたは私や左近様だけじゃなく、華さんにもここまで慕われていたんですよ。


「オレはなんと無力だろう」


あの時あなたはそう言ったけど、本当に無力だったらきっとここまで慕われはしない。


私は華さんに再び疑問を投げかけた。
< 304 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop