情炎の焔~危険な戦国軍師~
「三成様は死を覚悟していらっしゃった。だからきっと1ヶ月ほど前に、いきなりあんな手紙を使者に持たせて私に託したのでしょう」


華は深い竹林の中を歩きながら呟く。


「その手紙はこっそりあの方々の元に置いてきた。これでいいんですよね?私が持っていても仕方がないのですから」


何かを覚悟しているように彼女は言った。


「三成様。どうかお許し下さい。あなたを欺くために、侍女として近付いた罪深き私を。死んでもお詫びしきれません」


華のか弱い声は、どこまでも続いていそうな竹林に吸い込まれていく。


「ですが、私はあなたのそばにずっといたい。許して下さいますか?」


詫びる方法にしても、愛し方にしても彼女の頭の中には、もはや死という選択肢しかなかった。


友衣達に言ったように、出家すれば三成の魂をなぐさめられ、死ななくても共にいられる。


しかし、それを考えるには華はあまりにも幼すぎた。


あくまでも愛する人と一蓮托生の運命を望んでいた。


「三成様。私もあなたの元へ参ります…」


華はゆっくりと深い竹藪の中へ歩を進めていく。


そしてしばらくすると、その悲運の少女の姿は完全に竹に紛れて消えた。


その後、彼女の姿を見た者は誰もいない。


「それからあの娘御を捜索し、連れ戻せ。もういいだろう」


華のこの悲劇は、家康が彼女を連れ戻すための隊を派遣した直後のことであった。
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