情炎の焔~危険な戦国軍師~
「書きかけ、なんですかね?」


私は少しむなしさを感じながら言う。


「しかし、もしそうなら日付があるのもおかしくないですか?」


「そうですよね」


左近様の言葉に納得する。


「なんでこんな中途半端なんでしょう」


そう言った瞬間、ある可能性が頭をよぎった。


みかんみたいな匂い、まさか。


私は行灯に近寄り、手紙を火にかざす。


「友衣さん、何を?燃やす気ですか?」


左近様は少し慌てているが、私は冷静に答えた。


「もしかしたらあぶり出しかもしれません」


「あぶり出し?」


「柑橘類の果汁とか明礬(みょうばん)水とかで文字や絵を書き、こうして火であぶると書いたものが見れるようになるんです」


そう言っている間に手紙の続きが浮かび上がってきた。


「ほう」


左近様は感心したような声を漏らした。


2人で手紙の続きを読んでみる。


「お前達に出会えて本当に良かったと思う


最後にひとつだけ言いたいことがある」


その言葉と日付との間には、あぶり出した文字でやたら小さく


「ありがとう」


とあった。
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