情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あれ、今日って何日でしたっけ」


雪の上に寝転がったまま聞く。


「師走の24日ですよ」


「嘘っ」


「何をそんなに驚いてるんですか?」


「12月24日といえばクリスマスイブです」


「何ですか、それは」


彼の怪訝そうな顔を見て、あっと思う。


「私の時代では、クリスマスイブやその翌日のクリスマスにケーキという西洋のお菓子を食べて皆で賑やかにお祝いするんですよ」


「ほう。面白いですね」


「サンタクロースという人が夜中に来て、ほしい物を何でもくれるとも言われてるんですよ」


まあ、何でもというのは言いすぎだけれども。


子供達の夢のためにそれ以上は余計なことは言わない。


「へえ、ずいぶん気前がいい人がいるんですね。ところで友衣さんはほしい物ってありますか?」


「私ですか?」


「まあ、また牢人の身に逆戻りですからあまり金のかかるものはあげられませんがね」


少し悲しそうに笑う顔に自分まで悲しくなって、すぐさま否定した。


「そんな。私がほしいのは左近様だけです」


「え?」


きょとんとした顔をされて己の言葉の意味に気付き、焦る。


「いや、あの、違うんです」


「俺でいいんだったら今すぐにでもあげますが?」


クスリと美しい笑みが目の前で咲き、私はさらに落ち着きを失ってしまった。


「違います、違います。そういう意味じゃないんです」


「ふっ、冗談ですよ」


いつまで経ってもこの人の危険な冗談には慣れない。


まったく、いつも話を変な方向に持っていくんだから。


なのに、そんなところも含めてやっぱり左近様が好き。


恥ずかしくてふいと顔を横に向ける私を、彼はクスクスと面白そうに見ていた。
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