情炎の焔~危険な戦国軍師~
「好きなことに理由なんてありますか?」


「え?」


「そりゃ左近様の好きなところはたくさんあるけど、同時に悪いところも知ってます。でもこうして一緒にいたいと思うのは何より言葉には出来ない、心から惹かれる気持ちがあるからじゃないでしょうか」


「友衣さん…」


「まあ、要するに全部引っくるめて好きってことですよ」


なんだか自分が言ったことが恥ずかしくなった私は慌ててそう締めくくった。


「ずるいんですね。一番言われて嬉しいことを言うなんて。そして、俺が言おうと思ったことを言うなんて」


「本当ですか?」


「嘘ついてどうするんです」


左近様の顔にあの太陽みたいな笑みが広がり、ギュッと抱き寄せられる。


「左近様のおかげで今日は最高のクリスマスイブになりそうですよ」


「くりすますいぶ、ですか」


「はい」


キラキラ光るカラフルなイルミネーションも


華やかな飾りをたくさんつけたクリスマスツリーも


ロマンチックな音楽も


大好きなケーキもないけれど


左近様といれば幸せなクリスマスイブ。


「ふふ、今の私達って雪まで溶かしちゃうくらい熱いですよね」


「そういうことばかり言ってさらに俺の心を掻き乱したら、もっと熱くしちゃいますからね」


「何ですか、それ」


そう、こうやってたわいのない会話をして笑っていられるこの瞬間は当たり前にあるわけじゃない。


決して出会うはずのなかった左近様と愛し合える奇跡が、こんな素敵な時間を可能にしているんだ。


「メリークリスマス」


「めりい、くりすます」


たどたどしい横文字を発して照れる彼に身を委ねながら、私は佐和山城で寒いからと抱き合ったあの時より、遥かに深い情愛を感じていた。
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