情炎の焔~危険な戦国軍師~
花火大会の前日、私は各務家のお墓参りにやって来た。


セミの声をBGMに、誰の名前も刻まれていない墓石をピカピカになるまで拭き、持ってきたお花を活ける。


火をつけたお線香を供えて目を閉じ、手を静かに合わせる。


目を開くと視界に飛び込んでくるのは各務家の家紋。


笹竜胆(ささりんどう)だ。


隣のお墓に刻まれた家紋は三つ柏。


(左近様…)


「どんな時だって、あんたは1人じゃないんですから」


そう言って、三つ柏の家紋が鞘に刻まれた短刀をくれた彼を思い出す。


1人じゃない。


確かに左近様はあの時そう言ったのに隣には今、誰もいない。


「左近様。私、寂しいですよ…」


私はそっと呟いて目を閉じた。


左近様の向日葵のような笑顔がパッと頭の中に広がる。


このままずっと愛しさに触れていたかった。


そして、そのキラキラした思い出を抱いたまま、太陽のきらめきになってしまいたかった。
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