情炎の焔~危険な戦国軍師~
花火大会当日。


「じゃん!」


私は黒をバックに淡い桜色の花が舞うデザインの浴衣を身にまとい、くるりと回った。


髪形はいつものポニーテールと違ってお団子ヘア。


前髪には左近様がくれた八重桜の髪飾り。


耳には水色の小さなストーンをあしらった星型のピアス(マグネットだけど)。


「おお、似合うじゃん」


黒を基調に濃いピンクの花と白い蝶の模様が美しい浴衣を着た夏紀ちゃんが嬉しそうに言う。


理奈ちゃんはピンクが基調の白いバラとリボンの浴衣。


そして架恋ちゃんは白を基調として藤色の花が描かれた浴衣だ。


「じゃあ神社に行こう」


学校の近くにある神社では縁日が開かれる上に、高台の上にあるので花火が一段とよく見えるのだ。


神社に着くとすでに人で賑わっている。


芋を洗う、という言葉を使いたくなるほどスムーズな通行が出来ない。


「混んでるね」


「はぐれないようにね」


仲間達は口々に言いながら露店を物色する。


「あー、焼きそば食べたい」


「あたしはチョコバナナの気分」


「お好み焼きも捨て難いな」


(…あ)


りんご飴の屋台を見てふと、左近様と佐和山城下を散歩した時のことを思い出す。


「左近様、あれは何ですか?」


「あれは飴細工ですね」


そんなささいな会話さえも今となっては大切な思い出。


「いやあ、それにしても混んでるね」


架恋ちゃんがため息まじりに言う。


「本当。こんなに人がいっぱいなら、いい男も1人くらいいるんじゃない?」


夏紀ちゃんはニヤニヤしている。


「うんうん。ね?友衣」


理奈ちゃんが私の肩をポンと叩いてきた。


「な、なんで私?」


「だってぼーっとしてたから」


私は頷くことが出来なかった。


いい男なんていらない。


左近様だけがいればいい。
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