情炎の焔~危険な戦国軍師~
「ねぇ」


高台に来てから私は言った。


「誰かトイレ行かない?」


しかし、3人の友達は行かないと言った。


「じゃあ1人で行ってくるね」


「行ってらっしゃい」


「気をつけて」


私は孤独な状態でトイレに向かった。


「げっ」


どういうわけか唯一ある簡易トイレには長蛇の列が出来ている。


ざっと10分はかかりそうだ。


本堂の真ん前でため息をつきながら、私は暇を潰すためにバッグからゲーム機を出した。


セットしているカートリッジは言うまでもなく飛燕の如く舞え。


もはや関ヶ原(西軍)のシナリオを選ぶのは癖だ。


ゲームの画面の中で笑う左近様はもちろん本物と違う顔をしているが、やっぱりどこか似ている。


(もう1度逢いたい。愛しい人に)


恋心がまたゆっくりと再燃し始めた。


もうあの人しか愛せない。


強くそう思う。


いつだって曇り空を晴れにしてしまうような笑顔や、見返りを求めない優しさ、強い愛をくれる。


私は彼じゃないとダメなの。


好きの言葉だけじゃ足りないくらい愛してる。


左近様。


私の最愛の恋人(ひと)よ。


(お願い!もう1度私をあの人の元へ連れてって!!)


そして武将達の会話の後、いざ開戦。


すると…。


「!」


主人公の体力がいきなり半分になっている。


そして、あるべき場所に兵糧がない。


さらに敵武将の登場で敵の士気が急上昇した。


何もかも初めてタイムスリップした時と同じだ。


まさか…。


胸にあの時の記憶とわずかな期待がクロスする。


その直後、画面がまばゆく光り、私は意識を手放した。
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