情炎の焔~危険な戦国軍師~
その後、私は法春さん逹の元で穏やかな生活を送っていた。


左近様とも呆れるくらい共にいた。


まるで会えなかった空白の時間を埋めるように…。


ある日、私達は縁側に座って思い出について語らっていた。


「考えてみれば、私達が一緒にいたのって1年未満なんですよね」


「ええ」


私の隣で静かに頷く左近様。


「でも絆は強いですよね」


「はい。14年も再会を待ち焦がれるほどに」


「なんかすごいですよね。それにしても、びっくりするくらい色々あった1年でした」


「友衣さんと出会い、徳川と戦い」


「二人で城下町に行ったのが楽しかったなあ。飴細工のお店見たりとかして。あの時、桜の髪飾り買ってくれましたよね」


思わず笑みをこぼしながら話していると、彼はハッとしたような顔でこちらを見ている。


「どうしました、左近様?」


「いえ」


彼はそれ以上は何も言わなかった。


ただ広すぎる青い空の向こうを見ているだけ。


彼の表情を変えたくなった私はふいに話しかけてみる。


「左近様」


「はい?」


カシャッ。


私は自分の呼びかけに反応してこちらを振り向いた左近様を、素早くケータイのカメラにおさめた。


「???」


クエスチョンマークをたくさん浮かべる彼にケータイの画面を見せる。


そこには柔らかく微笑む顔があった。


私の呼びかけに、こんなに優しい顔で反応してくれるなんて。


「お、俺がもう一人?」


「私の世界ではこれを薄い紙にそっくりそのまま写すことも出来るんですよ」


いわゆる写真の話をしたら彼は実感がわかないのだろう、ポカンとしている。


私は財布から以前一人で撮ったプリクラを取り出して見せた。


「こりゃまたやたらと上手く出来た絵ですね。もらってもいいですか?」


「え、はい。こんなので良ければ」


予想外のリアクションにちょっと戸惑う。


「ありがとうございます。お礼と言っちゃなんですが、あんた暇ですか?」


「特に何もありませんが」


「それじゃ今から俺にちょっと付き合ってくれませんかね」


「わかりました」


その後、用件を聞いてみたけど左近様はふわふわと笑うばかりで答えてくれなかった。


一体何だろう。
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