情炎の焔~危険な戦国軍師~
そこは何の変哲もない小川があるのみだった。


音もなく静かに川がせせらぎ、生い茂る草がサラサラと風に揺れて音を立てている。


なぜ私をここに?


でも。


「水面(みなも)に夕陽が反射して…すごくきれい」


鏡のような水面にキラキラと光が散りばめられていて自然の美しさを感じる。


それに、左近様は私のために連れてきてくれたんだよね。


何ちょっと拍子抜けしているんだろう、罰当たりな。


私達は黙って小川のほとりに腰を下ろした。


風が草をササササ…と撫でる音と川がせせらいでいる音に包まれていると、時間の経つのを忘れてしまう。


乱世だということすら記憶から消えてしまいそう。


「いい所ですね」


私は左近様に笑いかけた。


「気に入ってくれました?」


「はい」


「でもこれが本当に見せたかったものじゃない」


「え?」


「今にわかります」


らしくない、曖昧な言葉を残して彼は口をつぐんだ。


変な左近様。


14年も会わない間に変わってしまったのかな。


なんてことを考えているうちに、次第に辺りが闇に覆われてきた時。


「あ…!」


私は思わず目を見張った。
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