情炎の焔~危険な戦国軍師~
「!?」


思わず声のした方を向く。


真っ白な雪景色に似合わない、髪も、スカーフも、忍者服も真っ黒な人がいつの間にか私達の真横に、細長い影のように立っていた。


「あんたは?」


左近様は不信感を露にしてそう聞き、私をかばうように黒い人との間に立つ。


「左近殿に友衣殿。かつて石田三成殿に仕えていた島左近殿と侍女の友衣殿がこんな山奥ににいらっしゃったとは」


どうしてこの人が私達のことを知っているの?


まさか…徳川の忍?


「あんた、何者だ?」


問いかける左近様の声はさっきよりも少し低い。


「颯(はやて)」


影のような人は淡々と答えた。


「聞き覚えのない名前だな。俺達に何の用だ?」


「あなた達の力を借りたい」


「どういうことだ?」


「まずはその固そうな守りを崩してもらいたいですね」


「何?」


その刹那、視界から黒いものが一切消えた。


「どこ…」


思わずキョロキョロした瞬間。


「危ない!」


左近様の手が私をドン、と突飛ばしてついしりもちをついた。


「痛…」


よろよろと起き上がろうと体を起こした時。


「!」


私の目に映ったのは、ゆっくりと雪に倒れていく左近様の姿だった。
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