情炎の焔~危険な戦国軍師~
「左近様!」


急いで彼に駆け寄る。


するとフッと背後に気配を感じた。


振り向くと、さっきの影のような人がいた。


「あなた、一体…」


「手荒な真似は好きじゃないんですがね」


「どうしてこんな…」


その先の言葉は出なかった。


影が飛び上がって姿が消えたと思うと、急に息が苦しくなる。


「っ!」


あの忍者みたいな人に口を塞がれているようだ。


(嫌だっ)


手を闇雲にバタバタさせるが、頭がボーッと遠くなっていく。


頭を殴られたみたいに眠くなる。


(左近様だけは…徳川の手に渡ったらダメ…)


霧がかかったような視界の中で、彼に触れようと手を伸ばしてもそれは空しく空気を掴むだけだった。


(ダメ…なのに…)


倒れている左近様に寄り添うように、私も落ちるみたいに雪に倒れ込む。


そしてスイッチが切られるみたいに意識がなくなった。


(三成様…)


あの人の遺志を継ぐ私達がこんな所で捕まるわけには…。
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