情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あなたは」


思わず一歩後退りする。


「お目覚めですね。早速ですが、主に会ってもらいましょうか」


薄く笑って忍も一歩迫る。


「嫌、来ないで」


「そんな小さい体で抵抗など出来ますまい」


忍の手中の苦無の切っ先がキラリと光った。


「左近様は?」


「別室にいます。もしかしたら主がもう会っているかもしれませんね」


「!」


まさか家康殿が左近様と…!


絶望のあまりがくん、と膝をついた。


「おや、一気におとなしくなりましたね。行く気になりましたか」


ぐい、と腕を掴まれた瞬間、我にかえった私は彼を振り払って逃げようとする。


しかし、すぐに背後から片手で抱きすくめられた。


「逃がしはしません」


「嫌、左近様!左近様の所へ行かせて!」


叫んだその時だった。


「何をしている」


その場の空気に清涼を与えるような凛とした声が響いた。
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