情炎の焔~危険な戦国軍師~
その声がした瞬間、忍は私を離して畏まるようにその場に座った。


な、何?


軽く混乱していると、1人の男の人が静かに部屋に入ってきた。


年齢は40代くらいだろうか。


それでいて涼やかな目に若々しい声。


「友衣殿か」


名乗ってもいないのに彼は唐突にそう言った。


私が答えようか迷っていると、男の人はスッと頭を下げる。


「うちの忍が手荒な真似をしたようですまなかった」


「い、いえ」


戸惑いながらも私は首を横に振る。


「客人に乱暴するとは何事だ。目的のために手段を選ばない性格なのは知っているが、もう少し丁重に致せ」


男の人に言われ、忍は肩をすくめた。


「あの、ところであなたは?」


私が問いかけると忍より偉いであろう彼は涼しい視線をこちらに向け、答えた。


「某(それがし)は真田幸村だ。そなたに頼みがある」
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