情炎の焔~危険な戦国軍師~
現実から目を逸らしたくなり、私は布団を引っ張り出して頭から丸まって、そのまま眠った。


「友衣さん」


左近様は月明かりに照らされた桜木の下で私を抱き寄せる。


まるで大切なものを外敵から守るように。


「左近様」


私は身体を委ね、彼の胸の音を聞いていた。


だんだん、それが速いテンポに変わっていく。


「私と同じ気持ちなんですね…」


自分の胸の左奥も熱く、速くなっていくのを感じながら呟く。


「友衣さんも?」


「はい」


すると彼は花の蕾が開くように笑って、私の頭をふわふわと撫でる。


「俺はあんたがそばにいるだけで幸せです」


「私もです」


甘やかな時間にうっとりと目を閉じ、そしてまた目を開けると、木の天井が映った。


「…はっ」


夢か。


よろよろと体を起こす。


何時間寝ていたのだろう、東側にあったはずの太陽が真上を通り過ぎて西側の空の高い所に浮かんでいる。


「左近様の夢を見てしまった…」


やっぱりどうしても考えてしまうんだ。


古来、自分の夢に出た人は、その相手も自分を想っているのだと考えられていたらしい。


それを聞いた高校生くらいの時の私はそんなわけないと思っていた。


でも。


「もう一度、信じてみたい…あの人を。あの人の気持ちは、私に向いているままであると」


愛を重ねて来た日々。


もらったたくさんの言葉。


すべてが偽りだったなんて思いたくない。


向き合わなきゃ。


今度こそちゃんと話を聞こうと思い、私は再び左近様の部屋へお邪魔した。


しかし障子戸を開けた先は蛻(もぬけ)の殻で、何か嫌な予感が胸を掠めた。
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