情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あ、それにしても見事な雪景色ですよね」


三成様が去った後も、まだ恥ずかしさでいっぱいの私はいきなり話を違う方向に変えた。


「ええ」


といっても、静かなわけではない。


大工さん達の声や金鎚の音でむしろ賑やか。


この佐和山城では塀を高くし、堀を深くする工事が行われているのだ。


「戦が始まるんですか?」


それは史実を知る私が一番よく知っているはずなのだが、聞かずにはいられなかった。


「おそらく」


手短な答えが返ってくる。


私が兵士として戦場に立つ日があと数ヶ月でやって来るんだ。


緊張する。


だけど守りたい。


口は悪いけど心配してくれる三成様を、そして私を抱きしめる愛しい人を。


「ところで、いつまでこうしてるつもりですか?」


嬉しいけど、いい加減恥ずかしさがMAXになったのでそう問うと、左近様はあっけらかんと答える。


「寒いんでもう少し」


「何ですかそれ。部屋に行けばいいのでは」


っていうかそういう問題?


「じゃ、あんたは寒くないんですか?」


「寒いです」


正直に答えると、まるで勝ち誇ったような顔になった。


「なら遠慮せずどうぞ」


「…好きなわけじゃないですから」


「わかってます。誑しは嫌いなんでしょう?」


切なげな微笑みに、こっちまで切ない気持ちになる。


私はそろそろと腕を伸ばし、彼の広い背中に回した。


そして心の中でそっと呟く。


(左近様。本当はあなたが好きです)


逞しい胸に頭を委ね、しばし想い人の優しい温もりに酔いしれた。
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