情炎の焔~危険な戦国軍師~
「どうして私を避けるんですか?」
ああ。
きちんと伝えなくては。
あの日、起こったこと。
その気まずさ故に話しかけられなかったことを。
「それは…」
その時。
「島様。淀の方様がお呼びです」
運悪く幸村の忍、藤吾が物音ひとつ立てずに現れた。
「ああ、今行く」
大きな後ろめたさを感じつつ、彼女から離れた。
その後の彼女の顔はいつでも曇り空。
たとえ嘘をつこうが真実を言おうが雨が降り出しそうに思える。
そう感じれば感じるほどに、俺は彼女にかける言葉を失っていった。
そしてそんな俺の隙に付け入るかのように、今度はいつしか侍女の桜さんが近付いて来るようになったのだ。
しかし気の毒ではあるが、俺はまともに取り合わないようにしていた。
俺はもう誑しの左近ではない。
好きでもない女と軽々しく戯れるような真似はしない。
だが、おとなしそうな顔に反して桜さんは俺の態度にしびれを切らしたのだろう、ある夜に廊下で言い寄って来た。
「左近様」
「またあんたですか。いい加減にして下さい」
去ろうとすると、手がぐいっと掴まれる。
「あたしっ」
手を離させようとしたが、次の言葉で体が動きをぴたりと止めた。
「あたし、左近様が好きなんです!」
ああ。
きちんと伝えなくては。
あの日、起こったこと。
その気まずさ故に話しかけられなかったことを。
「それは…」
その時。
「島様。淀の方様がお呼びです」
運悪く幸村の忍、藤吾が物音ひとつ立てずに現れた。
「ああ、今行く」
大きな後ろめたさを感じつつ、彼女から離れた。
その後の彼女の顔はいつでも曇り空。
たとえ嘘をつこうが真実を言おうが雨が降り出しそうに思える。
そう感じれば感じるほどに、俺は彼女にかける言葉を失っていった。
そしてそんな俺の隙に付け入るかのように、今度はいつしか侍女の桜さんが近付いて来るようになったのだ。
しかし気の毒ではあるが、俺はまともに取り合わないようにしていた。
俺はもう誑しの左近ではない。
好きでもない女と軽々しく戯れるような真似はしない。
だが、おとなしそうな顔に反して桜さんは俺の態度にしびれを切らしたのだろう、ある夜に廊下で言い寄って来た。
「左近様」
「またあんたですか。いい加減にして下さい」
去ろうとすると、手がぐいっと掴まれる。
「あたしっ」
手を離させようとしたが、次の言葉で体が動きをぴたりと止めた。
「あたし、左近様が好きなんです!」