情炎の焔~危険な戦国軍師~
「俺は何をしているんだ」


孤独な空間に向かって呟く。


愛する女一人笑顔にしてやれない。


こんなに思いが行き違うことなどなかった。


どんなに軌道から逸れても、必ずどこかで修正出来た。


でも今は軌道を逸れすぎて修正点さえ見つからない気がする。


「バカだな、俺は」


もう一度話したい。


だが、あの状態では火に油を注ぐだけに思われた。


いっそ距離を置いた方がいいのかもしれない。


距離を置いて、互いに冷静になれればもしかしたら。


しばらくそればかり考えてぼんやりしていたが、どうしても彼女の様子が気になって、こっそり部屋を見に行くことにした。


部屋の中には丸まったような布団がある。


誰かが頭から布団をかぶって寝ているようだ。


「友衣さん?」


彼女だろうと思い、起こさないようにそっと布団をめくる。


川のせせらぎのように穏やかな寝顔がそこにあった。


かつて俺の腕の中に存在していた顔。


「すみません」


そう言っても、何もかもが変わらなかった。


後ろ髪を引かれる思いでそこを去る。


そしてその足で城下町へ向かった。
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