情炎の焔~危険な戦国軍師~
ーサイド友衣ー


「…そうだったんですね」


話し終えた彼に私は言った。


「じゃあ、りつさんとも桜さんとも今は?」


「何でもなかったんです。俺にはあんたしかいないんですから」


「良かったあ!」


自然と大きな声になった。


今になって思う。


桜さんに抱きつかれているのを見た時、すぐにそこで訳を問い質そうとはしなかった。


目を逸らして、「明日問い詰めよう」だなんて考えてその場を立ち去って後回しにした。


私もいつのまにか逃げていたのかもしれない。


向き合うのを怖がってしまっていたのかもしれない。


「友衣さん。試すような真似をしてすみませんでした」


「もういいんです。冷たい川の中を、頑張って追った甲斐があったってもんです」


「俺らしさをも失わせるあんた、やっぱりすごい女ですね」


「えっ、俺らしさ?」


「恋は追われるより追うものです」


なんだか格言みたい。


「そうなんですか?」


「ええ。逃げてるものを追いたくなるのが男心ってもんですよ。だけどあの時、俺は確かにあんたを心の中で待っていた」


その言葉に私は微笑んだ。


あれ、でもいつも一緒にいてくれるのは私に追いかけたいという要素があるってことなのかな。


でも自分にそんなのがあるなんて思ったことないし、聞いてみよう。
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