情炎の焔~危険な戦国軍師~
「兄上がどうしたのです」
「信之は達者であろうか」
その問いに答えることは出来ない。
犬伏での別れから一度も会えていないのだ。
「口惜しきは徳川のことと言ったが、本当はそれだけではない。せめて信之の顔をもう一度だけ」
「父上…」
「武士らしからぬことを申したな。真田のために袂を分かつ以上、こうなることは覚悟していた」
そうは言っても、その顔は悲痛に沈んでいる。
それが余計に某の胸を痛くした。
「武士というのは、悲しきものなのですね…」
「幸村よ」
「はい」
「真田を…頼んだ」
「父上の思い、必ずやこの幸村が後世に咲かせてみせまする!」
思わず父上の手を取り、そう叫ぶ。
「良き息子らに恵まれ、わしはまことに幸せじゃ」
その父上の微笑んだ顔はいつになく力がないながらも、一番心から笑っているように見えた。
そして慶長16年。
父、真田昌幸はこの世を去った。
その約4年後、豊臣から誘いを受けた某はこの乱世に真田という花を咲かせるべく、再び武士として立ち上がることになる。
兄上のいる徳川を倒す決意を胸に秘めて。
友衣殿は何か思うところがあったのであろう、某に問いを投げかけてきた。
「信之は達者であろうか」
その問いに答えることは出来ない。
犬伏での別れから一度も会えていないのだ。
「口惜しきは徳川のことと言ったが、本当はそれだけではない。せめて信之の顔をもう一度だけ」
「父上…」
「武士らしからぬことを申したな。真田のために袂を分かつ以上、こうなることは覚悟していた」
そうは言っても、その顔は悲痛に沈んでいる。
それが余計に某の胸を痛くした。
「武士というのは、悲しきものなのですね…」
「幸村よ」
「はい」
「真田を…頼んだ」
「父上の思い、必ずやこの幸村が後世に咲かせてみせまする!」
思わず父上の手を取り、そう叫ぶ。
「良き息子らに恵まれ、わしはまことに幸せじゃ」
その父上の微笑んだ顔はいつになく力がないながらも、一番心から笑っているように見えた。
そして慶長16年。
父、真田昌幸はこの世を去った。
その約4年後、豊臣から誘いを受けた某はこの乱世に真田という花を咲かせるべく、再び武士として立ち上がることになる。
兄上のいる徳川を倒す決意を胸に秘めて。
友衣殿は何か思うところがあったのであろう、某に問いを投げかけてきた。