情炎の焔~危険な戦国軍師~
「えっ、もうひとり?」
「青霧(あおぎり)っていうんだけど、今は偵察に行ってる」
幸村様に初めて会った日、影月さんと藤吾さんしか紹介されなかったけど、その頃からずっと偵察に行っていたのだろうか。
いや、時々戻ってきていたんだろうけどタイミングが悪くて会えなかっただけかも。
「どこへですか?」
「徳川。多分あと少ししたら戻ってくるはず」
「徳川…」
近付いている。
戦の時が、少しずつ。
「やっぱり徳川との衝突は避けられないのかな」
大坂夏の陣。
幸村様が…討ち死にするはずの戦。
藤吾さんは私の一人言に対して冷静に答える。
「まあ、家康が難癖つけて無理難題を押し付けてきた時点で、向こうの意志は明白だから」
藤吾さんのこの言葉は、方広寺の鐘の事件(→p.347)をさしているようだ。
現代にいた頃、本で読んだことがある。
豊臣の建てたお寺の鐘に刻まれた文が、家康殿の名前を引き裂く、つまり呪うものであるとし、以下のいずれかを赦免の条件として豊臣に出すのである。
秀頼様が江戸へ参勤すること、淀の方様が江戸へ移住すること、豊臣の国替。
しかし、豊臣はいずれにも応じなかった。
よって豊臣と徳川はより対立し、大坂冬の陣が起きたのである。
「意志?」
藤吾さんの言葉に、そのまま聞き返す。
「家康は恐らく豊臣が素直に従わず、反抗することを見抜いていた。だからこそ戦の口実を作らせるためにあんな下らないこじつけを言ってきたんだよ」
「そうでしょうね」
「奴は本気で潰す気だ、豊臣を」
「そんな」
史実を知っていても、そう言わずにはいられなかった。
このまま何の手も打たなければこの城にいる皆は、少なくとも幸せな結末は迎えられない。
ー「そうか。だがオレはやらねばならぬ。秀吉様を、秀頼様を冒涜したあいつを、なんとしてでも懲らしめてやらなければ気が済まない」ー
ふいに、いつか三成様が吉継様に言った言葉が頭を巡った。
三成様。
豊臣のために大義を抱いて散っていった大切な人よ。
どうか、どうか私に戦う勇気を下さい…!
「青霧(あおぎり)っていうんだけど、今は偵察に行ってる」
幸村様に初めて会った日、影月さんと藤吾さんしか紹介されなかったけど、その頃からずっと偵察に行っていたのだろうか。
いや、時々戻ってきていたんだろうけどタイミングが悪くて会えなかっただけかも。
「どこへですか?」
「徳川。多分あと少ししたら戻ってくるはず」
「徳川…」
近付いている。
戦の時が、少しずつ。
「やっぱり徳川との衝突は避けられないのかな」
大坂夏の陣。
幸村様が…討ち死にするはずの戦。
藤吾さんは私の一人言に対して冷静に答える。
「まあ、家康が難癖つけて無理難題を押し付けてきた時点で、向こうの意志は明白だから」
藤吾さんのこの言葉は、方広寺の鐘の事件(→p.347)をさしているようだ。
現代にいた頃、本で読んだことがある。
豊臣の建てたお寺の鐘に刻まれた文が、家康殿の名前を引き裂く、つまり呪うものであるとし、以下のいずれかを赦免の条件として豊臣に出すのである。
秀頼様が江戸へ参勤すること、淀の方様が江戸へ移住すること、豊臣の国替。
しかし、豊臣はいずれにも応じなかった。
よって豊臣と徳川はより対立し、大坂冬の陣が起きたのである。
「意志?」
藤吾さんの言葉に、そのまま聞き返す。
「家康は恐らく豊臣が素直に従わず、反抗することを見抜いていた。だからこそ戦の口実を作らせるためにあんな下らないこじつけを言ってきたんだよ」
「そうでしょうね」
「奴は本気で潰す気だ、豊臣を」
「そんな」
史実を知っていても、そう言わずにはいられなかった。
このまま何の手も打たなければこの城にいる皆は、少なくとも幸せな結末は迎えられない。
ー「そうか。だがオレはやらねばならぬ。秀吉様を、秀頼様を冒涜したあいつを、なんとしてでも懲らしめてやらなければ気が済まない」ー
ふいに、いつか三成様が吉継様に言った言葉が頭を巡った。
三成様。
豊臣のために大義を抱いて散っていった大切な人よ。
どうか、どうか私に戦う勇気を下さい…!