情炎の焔~危険な戦国軍師~
翌日。
左近様はまるで何事もなかったみたいに他の人と話をしていた。
それは、単純に昨日の怒りを引きずっていないだけのようにも見えたし、私のことなんてどうでもいいと思っているようにも見える。
彼の目に今の私は映っていない。
それでも、伝えよう。
ちょっと不安だし怖いけど、伝えよう。
今日はバレンタイン。
好きな人に特別な思いを伝える日だから。
「左近様」
廊下で、いきなり呼び止めてみる。
「友衣さん」
振り向いたその顔は、少しの驚きと大きな気まずさが混ざり合っていた。
「…あの、私」
彼の部屋で向かい合って座る形で語り始める。
「昨日はごめんなさい。怖かったんです。自分に自信がなくて、左近様が誰かに取られてしまうような気がして」
「…」
彼は言葉を紡がない。
しかしそれは私の話の先を促すための沈黙のようで、とても真面目な目で私を見ている。
「だから思ってしまったんだと思います。きっと私といるより他の人といる方が楽しいんじゃないかって。だけど私はいつでも左近様の一番でありたい」
話を促す沈黙は続く。
「だから嫉妬してしまった。前に、左近様は私の嫉妬を消してくれましたよね。だけど、やっぱり怖くて」
「…」
「あの時は好きでいてくれても、いざこざがあったりケンカしたりした後、嫌な所を見せてしまった後、その気持ちは薄れてるんじゃないかなって、疑いたくないのに疑ってしまう。だから嫉妬してしまう」
「…」
「だから昨日、あんなことを言ってしまったんです。…でも」
スッと顔を上げ、視界の中央に彼の顔をとらえる。
そしてひとつ深呼吸をしてからはっきりと発声した。
「私は左近様が好き」
「あんた…」
私が語り始めてから初めて、彼は声を出す。
それはまるで凍結していた氷にひびが入って砕けていくようだった。
「深い愛をくれた、愛する喜びを、本当の幸せを教えてくれた、左近様が大好きなんです。世界中の誰よりも」
そこで私の言葉は塞がれた。
左近様はまるで何事もなかったみたいに他の人と話をしていた。
それは、単純に昨日の怒りを引きずっていないだけのようにも見えたし、私のことなんてどうでもいいと思っているようにも見える。
彼の目に今の私は映っていない。
それでも、伝えよう。
ちょっと不安だし怖いけど、伝えよう。
今日はバレンタイン。
好きな人に特別な思いを伝える日だから。
「左近様」
廊下で、いきなり呼び止めてみる。
「友衣さん」
振り向いたその顔は、少しの驚きと大きな気まずさが混ざり合っていた。
「…あの、私」
彼の部屋で向かい合って座る形で語り始める。
「昨日はごめんなさい。怖かったんです。自分に自信がなくて、左近様が誰かに取られてしまうような気がして」
「…」
彼は言葉を紡がない。
しかしそれは私の話の先を促すための沈黙のようで、とても真面目な目で私を見ている。
「だから思ってしまったんだと思います。きっと私といるより他の人といる方が楽しいんじゃないかって。だけど私はいつでも左近様の一番でありたい」
話を促す沈黙は続く。
「だから嫉妬してしまった。前に、左近様は私の嫉妬を消してくれましたよね。だけど、やっぱり怖くて」
「…」
「あの時は好きでいてくれても、いざこざがあったりケンカしたりした後、嫌な所を見せてしまった後、その気持ちは薄れてるんじゃないかなって、疑いたくないのに疑ってしまう。だから嫉妬してしまう」
「…」
「だから昨日、あんなことを言ってしまったんです。…でも」
スッと顔を上げ、視界の中央に彼の顔をとらえる。
そしてひとつ深呼吸をしてからはっきりと発声した。
「私は左近様が好き」
「あんた…」
私が語り始めてから初めて、彼は声を出す。
それはまるで凍結していた氷にひびが入って砕けていくようだった。
「深い愛をくれた、愛する喜びを、本当の幸せを教えてくれた、左近様が大好きなんです。世界中の誰よりも」
そこで私の言葉は塞がれた。