情炎の焔~危険な戦国軍師~
「左近、様」


私は彼の腕の中にいた。


そのまま離さないとでも言うように、きつくきつく抱きしめられる。


左近様の厚い胸。


優しい温かさと少し早い鼓動に包まれる。


私の一番好きな場所。


「バカですね」


抑え気味な声が耳元で聞こえる。


「俺があんたから離れていくだなんて思ってるんですか?何があっても一緒だって決めたのに」


「わ、私」


「でも本当のバカは俺です。そんな大切な人を不安にさせ、傷つけてしまった」


左近様…。


「こんなに一途で、健気な人を」


きゅ、と指先を握られた。


「友衣さん。俺こそカッとなって、あんなことを言ってすみませんでした。本当はあんたが大事だ。あんたと一緒にいることは侍女に騒がれるよりも、ずっとずっと大事なことなんです」


「良かった、良かったです。私の独りよがりじゃなくて」


安心して、雰囲気に酔うように目を閉じてみる。


このまま幸せを感じながらずっと抱かれていたい。


抱きしめられる度にそう思う。


…あ。


「あ、あの」


私はふと思い出して、彼に持っていた物を差し出した。
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