情炎の焔~危険な戦国軍師~
「この味、似てます。あの饅頭屋の味に」


それってまさか。


「昨日、左近様が食べていた城下町一番のお饅頭屋さんですか?」


「そうです」


「実は愛想の良いおじさんのお店で作らせてもらったものなんですが」


「きっとそこです。あの店の親父さんはとてもにこやかですから」


ま、そんなところも含めて城下町一番なんですけどね、と笑う左近様の顔を見て私の口元はほころんだ。


「不思議ですね。こうして笑っていると、戦なんて嘘みたいです」


「ええ、本当に。でも俺を笑顔にするのはあんたです。あんたが笑顔にさせてくれるんです。さすが俺の最高で最後の女だ」


「そんな。私なんてわがままだし、バカだし、全然綺麗じゃないし」


嬉しいのに、私なんかにはもったいない言葉に思えてつい卑下してしまう。


すると左近様はニヤニヤしながら言う。


「そうですねえ。友衣さんはおっちょこちょいで、素直じゃなくて、不器用だ」


「ううう」


「純粋な心の持ち主で、可愛くて、優しくて、誰よりも愛おしい」


「左近様」


「綺麗じゃないだとか何だとか。俺の最愛の女を侮辱する奴は許しませんよ」


頬をつんつんとつつかれ、私は照れて口を金魚みたいにぱくぱくするしか出来ない。


胸に情愛が広がってその優しさに甘えたくなる。
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