情炎の焔~危険な戦国軍師~
ーサイド左近ー
「あの…これ、バレンタインなので」
彼女が取り出したのは、少し形がいびつな饅頭だった。
「俺のためにわざわざ?」
「いや、あの、前も言いましたけど、バレンタインには義理ってものがありますでしょ?別に左近様のためだけに作ったわけじゃないですよ?」
彼女は目を横に逸らしつつ、声をうわずらせた。
頬が桜色に染まっている。
どこかの殿みたいに、行動や思いは正直なのに、言葉だけが素直ではない。
まったく、相変わらず可愛いんだから。
俺は笑いながら彼女に答えた。
「分かってますよ」
義理じゃないってことくらい、ね。
そう思いながらそれをひとつ頬張る。
饅頭の控え目かつ絶妙な甘みはもちろん、胸がふわーっと優しい気持ちに包まれていくようだ。
「友衣さんの気持ちがたくさん入ってます」
「あ…」
「しかし、この味」
「え?」
「この味、似てます。あの饅頭屋の味に」
「昨日、左近様が食べていた城下町一番のお饅頭屋さんですか?」
「そうです」
「実は愛想の良いおじさんのお店で作らせてもらったものなんですが」
「きっとそこです。あの店の親父さんはとてもにこやかですから」
ま、そんなところも含めて城下町一番なんですけどね、と笑ってみせる。
こんな偶然があるなんて。
「不思議ですね。こうして笑っていると、戦なんて嘘みたいです」
友衣さんは柔らかく微笑んだ。
「ええ、本当に。でも俺を笑顔にするのはあんたです。あんたが笑顔にさせてくれるんです。さすが俺の最高で最後の女だ」
そう。
今、俺がこうして穏やかな気持ちで笑っていられるのはあんたと出会えたからだ。
「そんな。私なんてわがままだし、バカだし、全然綺麗じゃないし」
彼女は自分に自信がないのか、時折こうして自虐する癖がある。
それなら。
「そうですねえ。友衣さんはおっちょこちょいで、素直じゃなくて、不器用だ」
「ううう」
ばつが悪くなったのか、彼女はただでさえ小さい肩をさらに縮こまらせている。
「純粋な心の持ち主で、可愛くて、優しくて、誰よりも愛おしい」
「左近様」
「綺麗じゃないだとか何だとか。俺の最愛の女を侮辱する奴は許しませんよ」
頬をつつくと、彼女はだいぶ顔を赤くして照れている。
本当に可愛い。
全部全部、独占したい。
彼女の全てを。
「あの…これ、バレンタインなので」
彼女が取り出したのは、少し形がいびつな饅頭だった。
「俺のためにわざわざ?」
「いや、あの、前も言いましたけど、バレンタインには義理ってものがありますでしょ?別に左近様のためだけに作ったわけじゃないですよ?」
彼女は目を横に逸らしつつ、声をうわずらせた。
頬が桜色に染まっている。
どこかの殿みたいに、行動や思いは正直なのに、言葉だけが素直ではない。
まったく、相変わらず可愛いんだから。
俺は笑いながら彼女に答えた。
「分かってますよ」
義理じゃないってことくらい、ね。
そう思いながらそれをひとつ頬張る。
饅頭の控え目かつ絶妙な甘みはもちろん、胸がふわーっと優しい気持ちに包まれていくようだ。
「友衣さんの気持ちがたくさん入ってます」
「あ…」
「しかし、この味」
「え?」
「この味、似てます。あの饅頭屋の味に」
「昨日、左近様が食べていた城下町一番のお饅頭屋さんですか?」
「そうです」
「実は愛想の良いおじさんのお店で作らせてもらったものなんですが」
「きっとそこです。あの店の親父さんはとてもにこやかですから」
ま、そんなところも含めて城下町一番なんですけどね、と笑ってみせる。
こんな偶然があるなんて。
「不思議ですね。こうして笑っていると、戦なんて嘘みたいです」
友衣さんは柔らかく微笑んだ。
「ええ、本当に。でも俺を笑顔にするのはあんたです。あんたが笑顔にさせてくれるんです。さすが俺の最高で最後の女だ」
そう。
今、俺がこうして穏やかな気持ちで笑っていられるのはあんたと出会えたからだ。
「そんな。私なんてわがままだし、バカだし、全然綺麗じゃないし」
彼女は自分に自信がないのか、時折こうして自虐する癖がある。
それなら。
「そうですねえ。友衣さんはおっちょこちょいで、素直じゃなくて、不器用だ」
「ううう」
ばつが悪くなったのか、彼女はただでさえ小さい肩をさらに縮こまらせている。
「純粋な心の持ち主で、可愛くて、優しくて、誰よりも愛おしい」
「左近様」
「綺麗じゃないだとか何だとか。俺の最愛の女を侮辱する奴は許しませんよ」
頬をつつくと、彼女はだいぶ顔を赤くして照れている。
本当に可愛い。
全部全部、独占したい。
彼女の全てを。