情炎の焔~危険な戦国軍師~
翌日、俺は城下町へ買い物へ出かけた。


昨日も今日も訓練を頑張っている友衣さんに、いつもの店の饅頭を差し入れてやろうと思ったのだ。


「これはこれは、いつもありがとうございます」


饅頭屋の親父さんの飾らない笑顔を見ていると、相変わらずこちらまで笑顔になれる気がする。


「こっちこそ、いつもうまい饅頭を食わせてもらって礼を言う」


饅頭を二人分買って急いで城へ戻る。


「やっ、はあ‼」


庭に竹刀を振り回す彼女がいるのを見つけて、俺は気持ちが上がっていくのを感じつつ声をかけた。


「友衣さん」


「!」


こちらを向いた顔がなぜか一瞬にして気まずそうになる。


「どうしたんです?」


曇り空のような彼女に近付くと一歩後退されてしまった。


「友衣さん?」


明らかに様子がおかしい。


心の臓が急に不安に潰されそうになる。


「…いきなりごめんなさい、左近様。言わなきゃいけないことがあるんです」


「え?」


「私と」


くるくると大きな目を泳がせ、口ごもりながら声をしぼり出すように友衣さんは唐突に言った。


「私と別れて下さい」


「わ、別れる?」


それって…。


「私達の関係を終わりにしてくれませんか。私、他に好きな人が出来てしまったんです」


あまりに突然で訳がわからず、夢の中の出来事ではないかと思われた。
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