情炎の焔~危険な戦国軍師~
「…」


あの後、足取りの記憶も確かではないまま部屋に戻った俺は一人で座り込んでいた。


「友衣さんに俺以外の男が…?」


そんなバカな。


しかし、間違いなく彼女自身がそう言ったのだ。


他に好きな人が出来た、と。


昨日の朝まで一緒にいたのに。


あんなに俺を愛してくれていたはずだったのに。


ふと、部屋の外に広がる抜けるように青い空が目についた。


気分が塞がっている時に見る綺麗な青空ほど虚しいものはない、と思う。


彼女に出会うまでの人生でさんざん女遊びをしてきたが、これほどにつらい気持ちになったことはない。


-「これも、報いなんですかね」-


りつとの件で友衣さんを苦しめてしまった時に、自分が放った言葉が脳裏をかすめた。


-「俺がもっと女にだらしなくなければ、彼女は苦しむことはなかった」-


あの時、俺はそう言った。


-「でも、傷付けたくてそうしたわけじゃないんでしょう?」-


友衣さんはそう言ってくれたが、本当は苦しんでいたのか?


俺は彼女の優しさに甘えてしまっていたのか?


もう今度こそ迷わせない。


必ず彼女だけを笑顔にしてやり、ずっと隣にいる。


そう思っていたのに。


…いや。


きっと、何か考えがあるのかもしれない。


友衣さんはころころ表情が変わるし、己の感情に比較的素直だ。


だが、これほどまでに一方的なのはどうも違和感がある。


会って話を聞きたい。


俺は廊下へ出た。


彼女を探してずんずんと歩き回る。


「!」


しかし、曲がり角を曲がった瞬間、足がぴたりと止まってしまった。


いや、足がすくんだと言った方が正しい。


「嘘…だ…」
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