情炎の焔~危険な戦国軍師~
廊下を曲がった先には藤吾。


そして、その腕の中にいたのは他でもない友衣さんだった。


彼女の目が俺をとらえて驚きの色に染まる。


そうか。


友衣さんが、好きな人が出来たと言ったのは藤吾のことだった。


そして藤吾もその気持ちを受け入れながら、何食わぬ顔をして平然と昨日、俺と話していたんだ。


「ハッ」


思わず、笑った。


怒りや悲しみを一気に飛び越えてしまった果てに笑いがあるなんて。


「そういう、ことですかい」


それだけ吐き捨て、俺は振り返ることもなく踵を返してその場をそそくさと立ち去った。


「女なんて、あんなものなんですかね」


部屋に戻り、俺は誰もいない空間に話しかける。


「あんなに頑なで、冷たいなんて」


一方的に別れを押し付け、他の男の腕に簡単におさまる。


もはや今の彼女は、かつて俺の胸の中で花の咲くような声を出していた彼女ではない。


俺の想いは変わっていないというのに。


「女に不自由せず、春を謳歌していた男が、惚れた女の移り気に悩まされる、か」


滑稽なことこの上ない。


それでも、やはり嫌だ。


それでも友衣さんとこのまま終わりになるなど、あまりに唐突で耐えられない。


「友衣さん。あんたが何と言おうと、俺は…」


教えて下さい、友衣さん。


俺に足りなくて藤吾にあるものは一体何なんですか…?
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