情炎の焔~危険な戦国軍師~
数日後、俺は床に伏せっていた。


高い熱を出して寝込んでいたのだ。


医者から風邪だと聞いた幸村が心配して見舞いに来てくれたが、なかなか良くならなかった。


「うう…」


意識がふわふわしている。


まとわりつくような熱さで思考が奪われる。


今までろくに病などかからなかったのに、ここに来て最愛の人を奪われ、熱で寝込む俺はなんて惨めだろう…。


そう思ってしばらくぼんやりしていると、いつのまにか夢を見ていた。


傍らになぜか友衣さんが座っている。


熱のせいか少し視界が歪んでいるが、それは彼女に間違いなかった。


俺の願望が、こんな夢を見させているというのか。


「うつして、いいですから」


そう聞こえたと思うと、顔がゆっくり近付いてきて、そっと唇が重ねられた。


久しぶりの口づけ。


困惑も棘もない優しい声。


柔らかな頬笑み。


すべてがばれんたの日以来だった。


なんて美しい夢だろう。


「友衣さん…」


どうか覚めないでくれ。


以前のように彼女の深い愛を感じられている。


今、俺の心は空を飛んでいるようだった。


ああ、またこうしてずっといられたらいいのに…。


だが、無情にもそこで夢は途切れた。
< 429 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop