情炎の焔~危険な戦国軍師~
「何、言って…」


耐えきれずに友衣さんは視線を横に頼りなく泳がせた。


やはりそうだ。


本気ならばここでうろたえるはずがない。


「友衣さんに刺されるなら本望です」


「バカなこと言わないで下さい」


「あんたにそんなの、似合いませんよ」


「似合う、似合わないの問題じゃないでしょう」


「だって友衣さんは優しい人じゃないですか。運命を知っていながら、俺や殿のために関ヶ原で戦い、命を投げ出す覚悟までしてくれた」


「…」


「苦しんでるあんたを放っておけないんです」


「…」


「友衣さん、今だけでいい。俺に本当のあんたを見せてくれませんか?」


心が揺れているのだろう、綺麗な瞳に動揺が走った。


「もし何か抱えているなら、少しでも力になりたいんです」


「でも」


「秘密を話したことで不都合が生じると言うなら、俺が友衣さんを降りかかる災いから助けます。…必ず」


彼女は眉根を寄せながらも、迷っているようだった。


「なぜ私のことをそこまで。構わないでと言ったのに、なぜ自ら厄介事に巻き込まれようとするんですか。私は」


「友衣さん!俺はっ…」


遮って俺は、誰かを愛する喜びを教えてくれた彼女への思い。


そして決意を口にする。


「俺は、たとえ俺のことをもう好きではないとしても、あんたを守ります。友衣さんのこと…この世で一番好きですから」


そう言うと、まるで術が解けたかのように顔から険がなくなった。


「左近、様…」


槍を力なく落とすのを見て、俺は彼女に近付いた。


そのまま抱き寄せる。


押し返されるかもしれないと思ったが、違った。


背中がふわりと温かくなる。


そして、体も。


俺はこの感じを知っている。


何度も、またこうして抱き合えることを望んできたんだ。


「左近様、ひどいことばかり言ってごめんなさい。私の話、聞いてくれますか?」


頷いてみせると、彼女は語り始めた。


なぜ、藤吾のことを好きだと言って、俺を突き放さなくてはならなかったのかを…。
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