情炎の焔~危険な戦国軍師~
それから数日後。


左近様が熱を出して寝込んでいるという話を聞いた。


すぐに様子を見に行きたかったが、簡単に行くわけにはいかない。


きっと私のせいだ。


その思いがいつでも頭の中に渦巻いて、自分を責めることしか出来なかった。


ある夜。


どうしても左近様が気になって眠れない私はこっそり彼の部屋を訪れた。


彼は小さく寝息を立てている。


そっと額に触ると、思わず手を引っ込めようとしてしまうほどに熱かった。


こんなになるまで私を想ってくれているのに、応えられない。


たまらなく嫌だった。


左近様は変わらず眠り続けている。


その顔をじっと見つめる。


「…」


ちょっとだけなら、いいかな。


寝ている今なら、大丈夫かな。


ずっと我慢してきたせいか。


無防備な寝顔を見ているうちに、燃え上がる気持ちが抑えられなくなってきた。


触れたい。


キスしたい。


その胸の中で温もりに甘えて眠りたい。


「うつして、いいですから」


そう言って顔をゆっくり近付け、唇を重ねた。


「友衣さん…」


顔が離れた瞬間にいきなり名前を呼ばれてどきりとしたが、寝言だとすぐに気付く。


名前を呼ばれるだけで、油を注がれたみたいにまた情炎の焔が心の奥で燃え上がっていく。


そして以前のように横に寝転がり、そっと片腕で大きな体を包んだ。


肩に顔を埋めると、一緒にいたあの日々に戻れる気がした。


どうか、今だけは。


今だけは隣にいることを許して下さい。


私の大切な人なんです…。
< 441 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop