情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あんたに俺が刺せますか」
左近様は動じずそう放つ。
「私は本気です」
普段しないことをしたからこそ本気が伝わると思ったのに。
「では、刺すなら刺して下さい」
返ってきたのは、期待とは全然違う言葉と、槍よりも痛いくらいまっすぐな眼差し。
「何、言って…」
「友衣さんに刺されるなら本望です」
冗談なのか、本気なのか分からない。
私だけが心の余裕がなくなってきているのを感じる。
「バカなこと言わないで下さい」
「あんたにそんなの、似合いませんよ」
「似合う、似合わないの問題じゃないでしょう」
「だって友衣さんは優しい人じゃないですか。運命を知っていながら、俺や殿のために関ヶ原で戦い、命を投げ出す覚悟までしてくれた」
「…」
「苦しんでるあんたを放っておけないんです」
「…」
「友衣さん、今だけでいい。俺に本当のあんたを見せてくれませんか?」
ずるいよ、左近様。
「もし何か抱えているなら、少しでも力になりたいんです」
「でも」
「秘密を話したことで不都合が生じると言うなら、俺が友衣さんを降りかかる災いから助けます。…必ず」
心の中で迷いがどんどん早く渦巻いて私を焦らせる。
「なぜ私のことをそこまで。構わないでと言ったのに、なぜ自ら厄介事に巻き込まれようとするんですか。私は」
あなたを何度も一方的に拒否してきたのに、という言葉は遮られた。
「友衣さん!俺はっ…」
こんな状況なのに、眼前の人の目は真剣でありながら、口元には微笑みさえ浮かべているように見える。
それはまったく揺るぎない思いが、すべてを超越してしまったような微笑に思えた。
絶対に覆ることのないと思える信念があるからこそ浮かべられる、笑み。
「俺は、たとえ俺のことをもう好きではないとしても、あんたを守ります。友衣さんのこと…この世で一番好きですから」
その言葉を聞いた時、少しずつひび割れていた心の中の氷が一気に砕けた気がした。
左近様にはもう隠せない。
全部話したい。
もし打ち明けたとしても何か救う方法があるかもしれない。
「左近、様…」
槍が手から滑り落ちていった。
そのままぎゅっと抱き寄せられる。
今までなら押し返しただろう。
でも今は素直な気持ちに従う。
体はもちろん心もふわりと温かくなる。
本当は待っていたんだ、この時を。
「左近様、ひどいことばかり言ってごめんなさい。私の話、聞いてくれますか?」
そして私はこれまでのことを全部打ち明けたのであった。
左近様は動じずそう放つ。
「私は本気です」
普段しないことをしたからこそ本気が伝わると思ったのに。
「では、刺すなら刺して下さい」
返ってきたのは、期待とは全然違う言葉と、槍よりも痛いくらいまっすぐな眼差し。
「何、言って…」
「友衣さんに刺されるなら本望です」
冗談なのか、本気なのか分からない。
私だけが心の余裕がなくなってきているのを感じる。
「バカなこと言わないで下さい」
「あんたにそんなの、似合いませんよ」
「似合う、似合わないの問題じゃないでしょう」
「だって友衣さんは優しい人じゃないですか。運命を知っていながら、俺や殿のために関ヶ原で戦い、命を投げ出す覚悟までしてくれた」
「…」
「苦しんでるあんたを放っておけないんです」
「…」
「友衣さん、今だけでいい。俺に本当のあんたを見せてくれませんか?」
ずるいよ、左近様。
「もし何か抱えているなら、少しでも力になりたいんです」
「でも」
「秘密を話したことで不都合が生じると言うなら、俺が友衣さんを降りかかる災いから助けます。…必ず」
心の中で迷いがどんどん早く渦巻いて私を焦らせる。
「なぜ私のことをそこまで。構わないでと言ったのに、なぜ自ら厄介事に巻き込まれようとするんですか。私は」
あなたを何度も一方的に拒否してきたのに、という言葉は遮られた。
「友衣さん!俺はっ…」
こんな状況なのに、眼前の人の目は真剣でありながら、口元には微笑みさえ浮かべているように見える。
それはまったく揺るぎない思いが、すべてを超越してしまったような微笑に思えた。
絶対に覆ることのないと思える信念があるからこそ浮かべられる、笑み。
「俺は、たとえ俺のことをもう好きではないとしても、あんたを守ります。友衣さんのこと…この世で一番好きですから」
その言葉を聞いた時、少しずつひび割れていた心の中の氷が一気に砕けた気がした。
左近様にはもう隠せない。
全部話したい。
もし打ち明けたとしても何か救う方法があるかもしれない。
「左近、様…」
槍が手から滑り落ちていった。
そのままぎゅっと抱き寄せられる。
今までなら押し返しただろう。
でも今は素直な気持ちに従う。
体はもちろん心もふわりと温かくなる。
本当は待っていたんだ、この時を。
「左近様、ひどいことばかり言ってごめんなさい。私の話、聞いてくれますか?」
そして私はこれまでのことを全部打ち明けたのであった。