情炎の焔~危険な戦国軍師~
「俺、本当は寂しかったんです」
「え?」
「何か隠している気がした。だけどあんたは何も言ってくれなかった」
「すみませんでした。私、何も言わないどころか嫌なことをずいぶん言ってしまいましたよね」
そう言って友衣さんは目を伏せる。
「だけど、どうしてですか?」
「何がですか?」
「俺のために悩んでいたんでしょう?藤吾に脅されて、それでも1人で抱え込んで、問い詰められれば槍まで振り回して隠し通そうとした。どうしてそこまでして」
すると、彼女の顔が切なげに歪んだ。
「仕方ないじゃないですか」
「何が仕方ないんですか」
「好きだからです」
「…!」
「好きだから隠したかったんです。藤吾さんのものにならなきゃいけないと分かっていても、片時もあなたを忘れられなかった。だけど左近様が死んでしまうのも絶対に嫌だった。だから嘘を、あなたを傷付けてしまうような嘘なんか」
「友衣さん」
思わず呼ぶと彼女はそこではっ、と言葉を止めた。
「あんたのせいじゃない」
「ごめんなさい」
「謝る必要はないですよ。咎めようと思って言ったわけじゃないんです。ただ、本当に俺には何でも言ってほしかった。たとえ脅されていても」
「左近様のその言葉は嬉しいです。ですが、もし打ち明けたら左近様を死なせてしまうかもって思って」
言葉を遮るように手首を掴む。
「こんなに細くて」
そして抱き寄せた。
「こんなに小さくて力のない体で、そんな大きいこと、抱えてたんですね」
俺はそれに気付いてやれなかった。
槍を向けられるまで友衣さんの心変わりを嘆くばかりだった。
「槍なんか振り回したら誰だってますます怪しむでしょう。不器用なくせに無理して」
今は後悔している。
「つらかったでしょう?」
労りとつらさの入り混じった声が口から出た。
「あんたは優しい人だ。そして、寂しがり屋だ。嘘をつき通して他人を遠ざけるのは苦しかったでしょう?」
「左近様…」
「もう、いいんですよ」
「え?」
「すべて終わった今、もう無理しなくていいんですよ。俺はいつでも一緒にいます。だから」
切なくて腕にそっと力を入れる。
「今度こそ俺の隣を離れないで下さいね」
「はい、必ず。もう迷いません」
友衣さんの腕が俺の体にきゅっと絡み、胸の奥まで抱きしめられているように感じる。
そのまましばらく、離れていた時間を埋めるように抱きしめ合っていた。
いつのまにか外は雪が降り始め、静かに積もっていく様はまるで誰かの悲しみを表しているかのようだった。
「え?」
「何か隠している気がした。だけどあんたは何も言ってくれなかった」
「すみませんでした。私、何も言わないどころか嫌なことをずいぶん言ってしまいましたよね」
そう言って友衣さんは目を伏せる。
「だけど、どうしてですか?」
「何がですか?」
「俺のために悩んでいたんでしょう?藤吾に脅されて、それでも1人で抱え込んで、問い詰められれば槍まで振り回して隠し通そうとした。どうしてそこまでして」
すると、彼女の顔が切なげに歪んだ。
「仕方ないじゃないですか」
「何が仕方ないんですか」
「好きだからです」
「…!」
「好きだから隠したかったんです。藤吾さんのものにならなきゃいけないと分かっていても、片時もあなたを忘れられなかった。だけど左近様が死んでしまうのも絶対に嫌だった。だから嘘を、あなたを傷付けてしまうような嘘なんか」
「友衣さん」
思わず呼ぶと彼女はそこではっ、と言葉を止めた。
「あんたのせいじゃない」
「ごめんなさい」
「謝る必要はないですよ。咎めようと思って言ったわけじゃないんです。ただ、本当に俺には何でも言ってほしかった。たとえ脅されていても」
「左近様のその言葉は嬉しいです。ですが、もし打ち明けたら左近様を死なせてしまうかもって思って」
言葉を遮るように手首を掴む。
「こんなに細くて」
そして抱き寄せた。
「こんなに小さくて力のない体で、そんな大きいこと、抱えてたんですね」
俺はそれに気付いてやれなかった。
槍を向けられるまで友衣さんの心変わりを嘆くばかりだった。
「槍なんか振り回したら誰だってますます怪しむでしょう。不器用なくせに無理して」
今は後悔している。
「つらかったでしょう?」
労りとつらさの入り混じった声が口から出た。
「あんたは優しい人だ。そして、寂しがり屋だ。嘘をつき通して他人を遠ざけるのは苦しかったでしょう?」
「左近様…」
「もう、いいんですよ」
「え?」
「すべて終わった今、もう無理しなくていいんですよ。俺はいつでも一緒にいます。だから」
切なくて腕にそっと力を入れる。
「今度こそ俺の隣を離れないで下さいね」
「はい、必ず。もう迷いません」
友衣さんの腕が俺の体にきゅっと絡み、胸の奥まで抱きしめられているように感じる。
そのまましばらく、離れていた時間を埋めるように抱きしめ合っていた。
いつのまにか外は雪が降り始め、静かに積もっていく様はまるで誰かの悲しみを表しているかのようだった。