情炎の焔~危険な戦国軍師~
翌日。


「うひゃー、寒い寒い。早く桜が見たいなあ」


今日も雪が紙吹雪のように絶え間なく舞っている。


私は盛大に独り言をもらしながら、幸村様の部屋に向かうために廊下を歩いていた。


3月とはいえ、この時代はまだまだ骨の髄まで凍えるように寒い。


確か14世紀半ばから19世紀半ばまで小氷河期と呼ばれていたようだけど、まさか自分の身で体験することになるなんてなあ。


「あれ?」


ふと見ると誰かが細長い影のように佇んでいる。


若々しく凛々しい整った横顔。


少年のように涼やかな目。


秀頼様だ。


こんな所にいて寒くないのかな。


「秀よ…」


声をかけようとしたが、出来なかった。


「…」


彼は、泣いていた。


「父上の、城が…」


その姿は実に痛ましい。


「ここは、私の家なのだ」


ああ。


堀が埋め立てられ、二の丸なども破壊されてしまった今、秀吉様がいた頃の面影は薄れてしまっているのだろう。


話しかけてはいけない気がして、私がその場をそっと離れた時。


「あなたは確か…友衣?」
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