情炎の焔~危険な戦国軍師~
「あ、島様」


彼の赤い頬の理由がわからないまま、また歩いていると、いきなり艶っぽい声が私の耳に飛び込んできた。


「初音か」


左近様の視線の先を見ると、30代くらいのおしとやかな雰囲気をまとった美女がいる。


「あら、そちらの娘さんは?」


「友衣です」


そう言い、私は急いで頭を下げる。


「友衣さんね。わたしは初音」


そう言って初音さんはまるで品定めするかのように、私の頭のてっぺんからつま先まで見てくる。


なんか嫌だなあ。


「初音」


見かねた左近様が私をかばうように前に立ってくれる。


「まあ、島様ったらずいぶんと趣味が変わったのね」


初音さんはクスクス笑っているが、目は笑っていなかった。


怖い。


「友衣さん、せいぜい深入りしないことね。あなたは島様に遊ばれているだけよ」


「そんなことっ…」


反論したいのに、なぜか逆らえない。


「あなたのような平凡な小娘に本気になるはずがないもの」


「いい加減にしろ。友衣さんにそれ以上何か言ったら許さない!」


そう言い放つ左近様の目は本気だった。
< 59 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop