情炎の焔~危険な戦国軍師~
ふいにくしゃみが出た。


そういえば城にいた時はだるかったし、今になると妙な寒さを感じる。


「大丈夫ですか?」


左近様は羽織り物の中に私を包むようにして入れてくれる。


「ん?なんか顔、赤くないですか?ちょっと失礼しますよ」


そして前髪がかき上げられたと思うと額をこつん、とぶつけられた。


ち、近い。


お互いのまつげが触れそうなくらい近いところに左近様の顔がある。


遠くから見たらキスしているように見えるんじゃないかな。


って何考えてるの、私。


一方の左近様は真面目な顔をしている。


「ちょっと熱っぽいですよ。風邪じゃないですか?」


「わかりません」


ぼんやりしてきた頭でそう答える。


「参ったな。雨さえなければ急いで城に帰って侍医に見せるのに」


「すいません。私…」


「無理にしゃべらないで。雨がやんだらすぐ城に連れて帰りますから」


ぐいっと体が引き寄せられて、抱きしめられる。


まるで雨からかばうように。


ちょうど良い温かさなのと、頭がますますぼんやりしてきたのとで眠くなってきた。


(左近様。今だけは甘えさせて下さい)


私はそっと広い肩に顔を委ね、眠りに落ちた。


体が熱く感じるのは恋のせいか病気のせいか。


考えてもわからなかった。
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