情炎の焔~危険な戦国軍師~
「やだ…」


胸に手をそっと当てると、まだ心臓がバクバクしている。


あの妖艶な笑み。


頭の芯まで溶かされてしまうような甘い言葉と声。


「おい」


ふいに背後から冷静な声が飛んできて、ミルクチョコレートよりも甘い気分に浸っていた私を我にかえらせる。


声の主は三成様だった。


「三成様」


「フッ。なんとまあ、だらしのない顔をしているのだ」


「なっ…」


いきなり何を言うの、この人は。


「左近に愛の言葉を囁かれたのがそんなに良かったか」


「いや、愛の言葉なんてなかったですけど」


「好いているのだろう?あいつを」


「ええと」


「まあ、わかりやすいお前のことだ。言うまでもない」


自分から聞いておきながら、答えようとしたら遮られた。


「左近は軍略に長け、武勇も申し分ない。女を誑し込むのが好きなのが、玉に瑕だな。お前もなかなか大変だろう。あいつにはそれとなく忠告しておいたがな」


「忠告?」


「わからなければ良い」


「言って下さいよ。気になるじゃないですか」


問いつめてみたが結局、三成様はそれ以上語らなかった。
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