情炎の焔~危険な戦国軍師~
ーサイド左近ー


「おっと、逃げられちまいましたかい」


恥ずかしげに小さくなっていく彼女の背中を見送りながら、俺は苦笑した。


「おい、左近。女で遊ぶのも大概にせよ」


殿が呆れ顔で言う。


「ハハ…」


「まあ、今さらそんなことを言っても聞くお前ではないだろうがな」


「わかっていながらわざわざ言うとは、あなたもお人が悪い」


「ふん」


殿も苦笑した。


「お前はあいつのどこを気に入ったのだ?」


「ま、からかい甲斐があるところですかね」


「それだけか?その割にはご執心だな」


「ご執心とは大げさな」


「最近、あいつとばかり話しているではないか」


「面白いですからね。色々な意味で」


「まあ、それはそうだがな」


殿はなぜか思案顔だ。


「殿?」


「男を知らない女をからかって弄んでばかりいると、いつか火傷するぞ」


それだけ言って殿は風のように去っていった。


「?」


なぜそんなことをわざわざ言いに来たのだろう。


「変ですね…」


釈然としない気分がしばらく続いた。
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