情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド友衣-


まただ。


また好きでもないくせに軽々しく可愛いだなんて言うんだ。


もう慣れたはずなのに、悲しい。


「私が男慣れしていようがいまいが、左近様には関係ないことですから。余計なお世話です」


つい言葉がきつくなってしまう。


「まあまあ。何なら手取り足取り教えてあげましょ?男女の情愛ってのを」


左近様はわざと明るくふるまってみせているのか、それとも反省していないのか、そんなチャラいことを言った。


「結構です。だいたい何ですか。その手慣れた感じは」


「何を怒ってるんです?」


「ですから!好きでもないくせに、思わせぶりなこと言うなんてひどいじゃないですか。詐欺ですよ、詐欺」


「ほう。なら、友衣さんは俺の特別になりたいんですね?」


「ち、違います!」


本当の気持ちなのに、その思いを伝えたくて怒ったり悲しんだりしたのに、いざバレると素直になれない。


「そんな真っ赤な顔で言われてもねえ」


顎がくい、と持ち上げられる。


嫌でも左近様の蠱惑(こわく)的な微笑みを見ることになり、体が沸騰したみたいに熱くなった。


「や、離して下さい」


「嫌です」


「左近様なんてもう知らないんですから」


そう思いきり怒って背中を向けてみせるが、左近様は構わず私を後ろから抱きしめた。
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