情炎の焔~危険な戦国軍師~
ーサイド友衣ー


その後、兵糧だの鉄砲だのの準備がどうたらこうたらだとか、戦の用意で色々と忙しくなった。


左近様も三成様の命で大坂に偵察に行ったり、情報を集めるために走り回ったりで忙しそうだ。


ただ、お供で大坂に行った人の話をこっそり聞くと時々、妓楼(ぎろう。遊女のいるところ)に行っていたということである。


しかもある特定の遊女を懇意にしていたらしい。


「妓楼ねえ。ちょっと残念だけど左近様らしいわ」


それを聞いたひなたさんはくすくすと笑っていた。


妓楼には様々なお客さんが来るから情報収集にはうってつけの場所であることはわかるが、なんか妬けちゃう。


「左近様がひいきになさっていたという女郎は、あの方が言うには垂れ目で内気で友衣さんに似ていたらしいですよ」


いきなり葵さんが口を挟んでくる。


「えっ」


思わぬ情報に私はびっくりしてしまった。


「良かったね」


ひなたさんがニコニコしながら肩を叩いてきた。


「べ、別に。ただ私に似ているってだけであって、私なわけじゃないんだから」


なんてことを私が言うと、葵さんはくすくす笑う。


「左近様は友衣さんのことをずいぶんと気になさっていますよ」


いつもの私ならそれを聞いたら喜ぶはずだった。


だが嫉妬心のある今、そういうことを聞くにつけても葵さんと左近様の仲を見せつけられているような気がして、私はなんとなく喜べなかった。


「なら、言います。友衣さん、俺はあんたが…」


左近様。


あの言葉に期待しちゃダメなんですか…?
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