情炎の焔~危険な戦国軍師~
「ふう」


一仕事終えた私は縁側に座って城下街を見下ろしていた。


「私より葵さんの方が左近様のことを知ってるんだなぁ」


ちょっとショックだった。


葵さんとの関係を知って2ヶ月。


まだ続いていたなんて。


「左近様は友衣さんのことをずいぶんと気になさっていますよ」


葵さんの言葉が蘇る。


「あんたみたいな泣き虫、心配で目が離せませんからね」


この前の左近様の言葉も思い出す。


この言葉を聞いてしまうと、気にしているというのは好きだからというよりただ単純に心配しているだけに思える。


「好きじゃないならいっそ冷たくして下さい。左近様…」


私はそう呟いて顔を手で覆う。


そうなれば期待しないし、これ以上惹かれないかもしれない。


「そういうわけにもいかないんですよ」


ふいに背後から声がした。


誰だかはわかる。


いつも巡り合わせのようにあの人は現れる。


「左近様」


「友衣さん」


私の目線に合わせるように彼もしゃがみ込んだ。


「俺は誑しです」


「ふふ、いきなり何ですか」


真面目な顔で思わぬことを言うので、つい笑い出してしまった。


「女なんて皆同じだと思ってました。変に遠慮し、しとやかぶって、媚びへつらい、機嫌を取りたがる。だけどあんたは違った」


「?」


「怒りや悲しみ、弱いところや悪い面も素直に見せてくれる。面白いと思った」


「いやあ」


まさかそれだけで褒められるとは思っていなかったので、照れてしまう。


「気付けばいつもあんたのことを考えてた。俺は…」


ふわりと体が温かくなった。


彼の声が耳元でする。


「俺、あんたが好きです」
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