情炎の焔~危険な戦国軍師~
「本当ですか?」


夢みたいで思わず聞き返してしまう。


「嘘ついてどうするんです」


耳のすぐ近くでくすりと笑う声がした。


「私も。前からずっと好きでした」


そう言うと私を抱く腕に力が入れられる。


…あ。


「やだ…っ、なんで」


嬉し涙を私は19年の人生で初めて流した。


「ほら、泣かない」


笑いながら涙を拭ってくれる目の前の人が愛しい。


そして、それから左近様は私だけを見てくれている。


他の侍女との噂はなくなり、妓楼にも行かなくなった。


恋の幸せとはこういうものなのか、と思う。


私は初めて味わう恋の甘美なときめきにすっかり浮かれていた。


しかしこの後、戦の気配はますます濃くなっていくのであった。
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