情炎の焔~危険な戦国軍師~
一方、大坂城の西の丸。


「上杉を討つ」


家康が端的にそう言うと控えていた家老や大名達に戦慄が走った。


「亡き太閤殿下に秀頼様の保護者として任命を賜いしこのわしへの反抗は、秀頼様への反抗も同然」


ことさらに怒ってみせると、一同は畏まった。


「乱世の火種は消さねばならぬ」


「しかしもし今、我々がここを離れたらあの佐和山の三成が挙兵しましょう」


大名の1人がおそるおそる発言すると家康はニヤリと笑う。


「それも想定済みよ。奴にとっては伏見、大坂を攻めるまたとない好機であろうからな」


「しかし、もし挟撃されたら我々は…」


「破滅、だな」


一同の背筋がぞくりと凍った。


「だが、すでに手は打ってある」


「と、おっしゃいますと?」


「それはまた後ほど」


家康はゆるりと笑いたい気持ちを腹の底でぐっとこらえた。


(見ておれ、三成。狐と狸ではどちらが賢いか教えてやろう)


そんな彼の腹の内を見抜き、難しい顔で彼を見ている1人の女がいた。


彼女は歴戦の勇士で家康に実力を見込まれて特別に気に入られている。


その名は…ゆい。
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