情炎の焔~危険な戦国軍師~
「三成様」
私は吉継様が城を辞してから再び部屋を訪れた。
ふと思いついたことがあったのだ。
「どうした」
「これを読んで下さい」
そう言って現代から持ってきた歴史小説を渡す。
「これは?」
「それを読んで考え直して下さいませんか?」
「お前まで反対するのか」
三成様の視線が鋭くなるが、私はこの時だけはひるまなかった。
「あなたのためです!」
「友衣…」
その剣幕に押されている間に三成様に歴史小説を押し付け、挨拶をして部屋を出る。
三成様の決意の固さは目の当たりにした。
だからたとえ関ヶ原の戦いに負けると知っても、考えを改めてくれないかもしれない。
でも肝心なところで声が出なくなるという奇妙な現象が起きる以上、こうでもしないと伝えられないから。
中身はもちろん活字体で書いてあるからこの時代の人は読めないだろうけど、とにかく少しでもどうにかしたい。
心の中で祈りながら廊下を歩いた。
「ふっ、はっ」
なんとなく竹刀の素振りの真似をしてみる。
戦が起きないでほしいと願っておきながら、しっかり戦の練習をしているなんて滑稽だ。
しかし、なんだか不安が拭い去れないのである。
「誰かいるのか?」
通りかかった部屋から酔っ払った声がした。
「はい」
「酒を持ってきてくれ」
慌てて台所に行ってお酒をもらい、先程の部屋に戻る。
「失礼します」
中へ入ると顔の赤い左近様がいた。
足元には徳利の乗った盆がいくつも置かれている。
「ああ、あんたでしたか」
「左近様、ちょっと飲み過ぎじゃないですか?」
「…」
私の言葉に彼は何も言わなかった。
私は吉継様が城を辞してから再び部屋を訪れた。
ふと思いついたことがあったのだ。
「どうした」
「これを読んで下さい」
そう言って現代から持ってきた歴史小説を渡す。
「これは?」
「それを読んで考え直して下さいませんか?」
「お前まで反対するのか」
三成様の視線が鋭くなるが、私はこの時だけはひるまなかった。
「あなたのためです!」
「友衣…」
その剣幕に押されている間に三成様に歴史小説を押し付け、挨拶をして部屋を出る。
三成様の決意の固さは目の当たりにした。
だからたとえ関ヶ原の戦いに負けると知っても、考えを改めてくれないかもしれない。
でも肝心なところで声が出なくなるという奇妙な現象が起きる以上、こうでもしないと伝えられないから。
中身はもちろん活字体で書いてあるからこの時代の人は読めないだろうけど、とにかく少しでもどうにかしたい。
心の中で祈りながら廊下を歩いた。
「ふっ、はっ」
なんとなく竹刀の素振りの真似をしてみる。
戦が起きないでほしいと願っておきながら、しっかり戦の練習をしているなんて滑稽だ。
しかし、なんだか不安が拭い去れないのである。
「誰かいるのか?」
通りかかった部屋から酔っ払った声がした。
「はい」
「酒を持ってきてくれ」
慌てて台所に行ってお酒をもらい、先程の部屋に戻る。
「失礼します」
中へ入ると顔の赤い左近様がいた。
足元には徳利の乗った盆がいくつも置かれている。
「ああ、あんたでしたか」
「左近様、ちょっと飲み過ぎじゃないですか?」
「…」
私の言葉に彼は何も言わなかった。