情炎の焔~危険な戦国軍師~
「さ、左近様っ」


頭が真っ白になってそれだけしか言えない。


「友衣さん、俺…」


そこで彼の言葉は途切れた。


「うむっ!?」


急に体に重みがかかる。


な、何?


と思っていると耳元で穏やかな寝息がする。


どうやら酔っ払って寝てしまったようだ。


「こんなところで寝たら風邪引きますよ」


しかし、揺さぶっても話しかけても起きてくれない。


私はなんとか左近様の下から這い出して、布団を敷き、その上に寝かせた。


「…」


左近様は寝ている顔まで精悍だが、無防備だと思った。


そっと彼の左目の下の古そうな向こう傷に触れる。


「ん…」


彼は小さな声を上げたが起きはしなかった。


この傷さえも愛しい。


お酒とわずかな左近様の香りがする部屋の中、胸の奥でかすかに燃え上がる情炎を感じながら、私は夜明けまでそばにいた。
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